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「ああ、だんだんあんたが“共犯者”に見えてきたぜ警部!」
演技とはいえ、何を言ってくるのだこの若者は…。
そう思いながら、必死で食い下がってくる様子のギルバート相手に、私は慣れぬパフォーマンスを続けなければならなかった。
彼が、きっとあるのであろう、次の“先手”を打ってくるまでだ。
幸い、会場に集まったエドワード信奉者達は、私の素人演技にすっかり騙されてくれたらしい。
私が自分達の“味方”で、この弁護士は“敵”だと認識したらしいことは、次々と我々に向けられる言葉で分かった。
しかしギルバートは、なおも私に食ってかかってくる。
次に一体どうなるのか、私には全く見当も付かない…。
「皆さん待って下さい」
満を持して、会場にエドワードの声が響いた。
それまであれほど収拾がつかなくなっていた聴衆の注目を、それは一気にかき集めることに成功した。
私も若者との言い争いは一旦止めにして、会場の前方に視点を合わせる。
しかし私はそこで、大変嫌な感じに出くわすことになった。
私の視線の先に居た男は、それまでと何かが違っていた。
周囲の信者達も、そのことに気付いたのか、凍りついたように沈黙している。
畏れをなして、と言うべきか…。
祭壇の向こうに居た男は、恐ろしい程白い表情をその顔に貼り付けていたのだ。
元々大変色の白い男ではあったが、今まで豊かに蓄えていた柔和な笑みを失ったその顔は、もはやこの世のものとは思えない。
私も今まで多くの凶悪犯に出くわしてきたが、かつてあんな顔をした男は見たことがなかった。
そしてその両の目は、私を通り越して、私のすぐ後ろを見ていた。
私は気配でその存在を確認する。
そう、今まで私と、ひたすら口論を演じていたギルバートだ。
私は何だかとても恐ろしい気持ちだった。
まるであの瞳で、この若者の存在を消し去られてしまいそうで。
しかしあの男の顔から、私は視線を離すことができなくて、背中で若者の名を呼んだ。
「ギルバート…」
自分でも、消え入りそうな声だと思った。
しかしその時、私の小声など蹴散らすかのように、あの男がもう一度言葉を発したのだ。
「前へ、出て来てもらえませんか、弁護士さん」と。
もはや誰1人として声を発する者はいない。
ただ1人のペテン師によって、この場はひとつに統一されたのだ。
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