第6章の2

1/4
前へ
/84ページ
次へ

第6章の2

「あなたに分かっていただくには、もうこうするより他に方法は無い気がします」と、エドワード・フェニックスは言った。 「私は、あなたが今日、ここに現れなければいいのに、と思っていました」 そう言葉を続けながら、男は微塵も表情を変えない。 一方のギルバートもまた同じだった。 きっと“本当に殺すわけがない”と思っているのだろう。 この大衆の面前で、何故この強かな男が、自ら好き好んで犯罪者になろうとするものか、と。 これは、私達が先程演じたのと同じ、単なるパフォーマンスだと私も思いたかった。 しかし私はどうしても、その“予感”を拭い去れなかったのだ。 2人は、通路の中央で対峙した。 その距離は僅かなものである。 ペテン師が数歩踏み出せば、すぐに切っ先が相手をとらえるぐらいの…。 観衆は、エドワードの行動がとても信じられないらしく、誰もが血の気の引いた青い顔をその場に並べていた。 永遠かとも思えた時間の後……。 不意にペテン師が、目にも留まらぬ勢いで、その右足を踏み込んだのだ。 そして、誰もが我が目を疑った。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加