~手紙~

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家を出てから6年間もだぜ? いい加減参っちまうよな。 そんなこんなで、エドワードが遂に病気になっちまったんだ。 なけなしの金で医者に診せたら、もう長くないって言うじゃないか。 俺は、あいつが病気になったのは、全部無理矢理都会へ連れ出した俺のせいだと思った。 散々後悔して、エドワードにも散々謝ったけど、あいつは気にしてないって言ったんだ。 それで、どうせ先が長くないのなら、俺達をこんなめに遭わせた親父と同じ金持ち共から、最後にわんさか金を巻き上げて復讐してやろうって言ったんだ。 俺は最後ぐらい、あいつに大人しく静養していて欲しかったのに、あいつがどうしてもやると言ってきかないから、俺が例の計画を考えた。 そしてあいつには、一番華々しいパートを任せることにして、俺はあいつと直接会うことは控え、全ての指示は手紙で行うことに決めた。 俺達の計画は全て順調に進み、俺は頃合いをみて、エドワードを告発する為に粗を探す弁護士のパートを上手く演じて、よりエドワードのペテンに信憑性をもたせようとしたんだけど、あの修道院に集まった馬鹿な金持ち共が、俺に散々ヤジを飛ばしてくるのが、もうおっかしくておっかしくて…。 エドワードはいつもにこにこ笑ってたろ? あれは大笑いしたいのを、必死に堪えてたからなのさ。 エドワードが俺に勝負を挑んできたことも、みんな俺の考えたパフォーマンス。 誰があんな大衆の中で、騒ぎに紛れてキーワードを声高に叫んだところで、聞こえるものかよ。 そう、箱の中身を当てる透視をやった時の話さ。 確かに俺達はいくつか、金持ちが箱の中に入れそうな物を合い言葉にして決めていた。 あの時俺が、あいつに向かって言った言葉を警部は覚えてる? “秘密は見えたのかい?”って言ったんだよ。 “秘密”というのは、重要書類を示す合い言葉さ。 まぁ重要書類なんて、冗談半分で考えたことだったし、本当に箱の中にそんな物を入れる馬鹿が居るとは思わなかったけど…。 俺が堂々とあいつに向かって話し掛けるんだ。 絶対エドワードの耳に届くし、誰も気が付かない。 でもあの時、エドワードが俺にあの黒い箱を手渡した時、しばらく間近で会ってなかったあいつの病気が、すごく悪くなってるってことに初めて気が付いた。
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