~手紙~

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俺は心配になって、あの後、警部には奴を尾行すると嘘をついて、裏口でエドワードを待ち伏せて会ったんだよ。 あいつは相変わらず平気そうに、大丈夫だよと言った。 金持ちから巻き上げた大金の一部を、ちゃんと病気の治療に使ってるから平気だって。 俺が、本当にこれでいいのかって言ったら、あいつは当たり前だって言って笑ってた。 でもその後、道端で再会したのは意外だったな。 あれは本当に、俺達の計略の中には入ってなかったことだったからね。 それにまさか、あんな婆さんにまでエドワードの噂が知れてたとは思ってなくて。 悪いことをしたなと思った。 結果的にあの婆さんまで騙したんだもん。 俺、後であの人の息子がどうなったのか知りたくて、探してみたんだけど、やっぱり見つからなかったよ。 病は気からって言うから、あのただの水を飲んで、少しは元気になってくれてればと期待したんだけどさ…。 警部、エドワードの家に居た、あの女の子のこと気にしてたでしょ? あの子は、エドワードが田舎に残してきた妹。 あいつはずっと気にしてたんだけど、自分1人勝手に田舎を捨ててこっちに出て来たから、会いづらいって言ってたんだ。 エドワードの病気のことが分かってから、俺が彼女にそれを報せて、田舎から呼んだんだよ。 彼女、甲斐甲斐しく兄貴の看病してくれててさ。 あいつがいつも薬飲み忘れるから。 エドワードと道端で再会して、1ヶ月ぐらいして、その妹から俺に手紙が届いたんだ。 “兄の体調が思わしくない”って内容の。 だから俺は心配になって、夜にこっそり会いに行こうとしたら、階段の下に警部がいるんだもんなぁ。 どうしたもんかと思ったけど、とりあえず俺はあいつのところに行きたかったから、トリックが解けたとデタラメを言って、辻褄を合わせたわけ。 …やっぱり警部という余計な者がついて来ちまったけどな。 でもまさか、もう死んじまってるなんて思いもしなかったさ。 あの時は、流石に俺もね、本当に悲しくて泣いたんだよ。
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