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くるけど、ぼくはじっときいていた。きっとこれからこわいはなしがはじまる。そうおもうとわくわくしていた。
「西成区っていうのは、本当に汚くて怖いと思われている街やった。今でもそうなんやろな。盗み、殺人、恐喝。そんなん当たり前。やくざと浮浪者の集まりみたいな所や。その中でも、飛び抜けて変な人間が集まるところにパパは生まれて住んでたんや。物心ついたときはもう、お母ちゃんはおらへんかった。周りのおっさんたちはパパやパパのお父ちゃんにからかいがてらこう言った。
(お前のおかあちゃんは銭湯に行くって言うて、そのまま帰ってこんかった)
(きっとどっかのパチンコ屋でも働いてるんとちゃうか)
(まあ、父ちゃんが父ちゃんやからな。酒呑んだら手(てぇ)、つけられへんからな。お前が生まれる前、妊娠しとったけど、その母ちゃんを階段の上から突き落としたからなぁ。それで流産や。その後、すぐお前ができたけどな)
パパは大人たちの中で、酒さえ飲まへんかったけど、するめとかホルモンとか食わされて生きとった。
不思議なことにお母ちゃんと三歳くらいまでは一緒にいたはずなのに、お母ちゃんと一緒にいた記憶は一切ない。顔も全然覚えてへん。まあ、子供の頃の記憶なんて、わからんもんやけどな。
せやけど、パパは産まれる瞬間の事は覚えてるねん。かつきは生まれる時のこと覚えてるか?」
「うまれるとき?」
「そう、ママのお腹から出てくるとき」
「かつき、ママのおなかからなんかでてきてないよ。かつきはかつきだよ」
パパはへんなことをいいました、かつきはきがついたときから、かつきだったもん。ママのおなかになんかいないや。
「えっ? じゃあ、かつきはどうやって生ま
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