パパ

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なかったと思うけど、そのあともめて、結局、何千円かせしめて、しばらくアパートに住めたみたいやった。  父ちゃんは結局、どんな仕事してたのか今でもわからん。  西成を抜け出して、小学校に行った頃ははっきりしてるよ。  ただ、西成にいるときは何してたのか、なんとなくわかってるけど記憶がとびとびやから、どの時期に何をしてたんかようわからんかった。  ラーメン屋の時期もあった。屋台をひっぱって、その屋台の上に乗ってた覚えがあるけど、記憶が短かったから、少しなんやろな。鶏肉……かしわって言うんやけど、それを捌くのが得意で、そういう店にも勤めてた。  けど、結局、長続きせんかったんやろな。それが、本人の酒のせいか足が悪いせいかわからんかった。多分、足が悪かったから、思い通りに事が進まんで、酒に走ったんやろな。  そう、お父ちゃんはもう、俺が生まれたときから足が悪かった。多分、左足やったと思う。いろんな差別用語があって、よくからかわれるときはそういう言葉で呼ばれてた。今となってはよく覚えてへんけど、手術とかしたら治ったんかな? 多分、無理やったんやろ、後から聞いたら、子供の時からそうやったらしいから。  だから歩き方が変やったよ。びっこをひくって言うけど、靴とかではなく、いつもサンダルみたいなやつ履いてたから、足音で近づいて来ることがわかったんや。  けど、西成ってゆうところはそれでも生きていけた。  いや、もしかしたらそういう人の集まりなんかも知れん。  西成ってゆうても広いから、電車の駅もあって、商店街もあって、普通に生きてる人もおる。パパの住んでた場所がそういう人たちの集まりやった。地名でゆうたら天下茶屋っ
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