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6回1死ランナー無し。3度目の歌川の打席。
打たれたのは外角高めのストレートと、内角低めのスライダー。
って、コイツにはコースも球種も関係無いのかよっ!
こうなったら、奥の手を使うしかないな。
松田も俺の期待通りのサイン。
振りかぶりながら、ボールを指に挟んだ。
見送られてもいい。フォークがあると意識させるだけでも、バッターは迷いが生じる。
腕を振り、イイ感じに抜けた。
次の瞬間には、体勢を崩して空振る歌川の姿があった。
チャンスだ。
松田もわかってる。すぐに俺に返して決まってるサインを出す。
俺は歌川が構えたかどうか、というタイミングで投球モーションに入った。
その混乱した中、間髪入れずに投げ込む150キロ近いストレートを打てるワケがない。
これで追い込んだ――
歌川がバットを寝かせた。
――セーフティーっ!
さっきまであんなに強行して、ここでやるかよ!?
コンッ
これまた絶妙な三塁線へのバント。
強打を警戒して、外野だけでなく、内野も少し下がっていた。
その穴を、あっさり狙われた。
サードが素手で捕ったが、完全に間に合わずファーストに投げるのを諦めた。
なんてヤツだ…
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