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猪瀬さんは少し考えて、言った。
「待って、強くなること、だな」
――待つ
「ひいきと言われるかも知れないが、わしは立花も里谷もいい線行ってると思う。普通に考えたら、こんなトコにはいないはずだ」
普通に考えたら、か。
「ま、プロともなると色々とカネや権力といったしがらみが露骨にある。今まで立花も相当戦ってきたとは思うが、プロはプロでまた別格の壁がある。そいつを辛抱強く壊せる強さが、必要だな」
別格、とはいえ私の敵が野球以外のものというのは、何も今に始まった話ではない。
「分かりました」
野球が敵でないことに若干の寂しさはあるものの、野球自体に問題が無いのであれば、
「私は待ちますよ、何十年でも」
一生でも、我慢比べしてみせる。
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