キャンプ(後半)

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 猪瀬さんは少し考えて、言った。 「待って、強くなること、だな」  ――待つ 「ひいきと言われるかも知れないが、わしは立花も里谷もいい線行ってると思う。普通に考えたら、こんなトコにはいないはずだ」  普通に考えたら、か。 「ま、プロともなると色々とカネや権力といったしがらみが露骨にある。今まで立花も相当戦ってきたとは思うが、プロはプロでまた別格の壁がある。そいつを辛抱強く壊せる強さが、必要だな」  別格、とはいえ私の敵が野球以外のものというのは、何も今に始まった話ではない。 「分かりました」  野球が敵でないことに若干の寂しさはあるものの、野球自体に問題が無いのであれば、 「私は待ちますよ、何十年でも」  一生でも、我慢比べしてみせる。  
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