歌川駆1

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 6回ワンアウト。俺の第3打席目が来た。  ここまで浅田がウチに許した出塁は、俺のヒットの2本だけで、四死球は未だ0。  大したコントロールだこと。  打席に入って、キャッチャーが立ち上がり、俺の前で守る野手に細かくサインを出した。  何か、めっちゃ警戒されてるな。  これまでの2打席を強振したからか、外野だけでなく内野も強い打球に対応するために下がり気味。  まあ、ここまでご丁寧にやって、フォアボールってオチはねえよな。  初球、ボールか厳しいコースへの変化球かな。  甘かったら、思いっきり叩いてやる。  浅田が振りかぶり、投げ込んでくる。  真ん中やや低め。  ――甘いっ!  スイングが始動、しかし、ボールが消えた。  しまっ…!  気づいた時には、体勢を崩され、空振り。  まさか。  フォークか。  いやでもこれまでフォークなんて投げてなかっ…  ――浅田が振りかぶっていた。  タイムをかけるのもできるのだが、浅田に圧倒されそれすら忘れていた。  ヤバい…  その時、ふと閃いた。  ――内野、下がってる。  苦し紛れではあったが、体が反応した。  セーフティーバント。
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