浅田剣一1

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 投げた高さが低かったおかげで、打球は上がらない。上がりはしなかったが、その代わり、珍しいことが起きてしまった。  ボフッ!  打球がファーストベースを直撃し、ライトのファールゾーンへ転がった。  長打を警戒したライトとファーストのど真ん中に打球が行く。  そして、全力疾走する歌川を、見てしまった。 「3つだ!」  あれは3塁打を狙う走りだ。しかも、さすがに1番と言うだけあって足も速い!  またやられた。  ライトが追い付いたのと、歌川がセカンドを蹴ったのはほぼ同時。  …間に合わない。  グラウンド内の全員が、そう確信した。  サードにボールが戻る頃には、サードにスライディングしてもう立ち上がった歌川がいた。  県内にまだこんな凄いヤツがいたのか。  でも、野球は一人じゃできない。  続く2番を三振に仕留め、点は与えなかった。  今度は打たれたショックよりも、対戦する楽しみが出来た喜びが大きくなってベンチへ戻った。  
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