針穴と糸先

11/21
前へ
/137ページ
次へ
襖(ふすま)が勢いよく開き。 「すいません!! 遅れました!!」 その声に全員が注目した。 視線の先には、両手に紙袋やビニール袋をたくさん抱えた熊田 巴夏(くまだ ともか)が立って居た。 走って来たのか、息切れをしながら重そうな荷物を志津子に渡した。 志津子「待ってねぇーえ」 素っ気ないが、顔は怖いくらいに笑顔だった。 熊田はおしぼりで汗だけ拭こうと広げて、顔に当てた瞬間!! 志津子が持ち上げた袋の一部が顎(あご)にクリンヒット。 熊田がかけていた眼鏡が飛び、出て来た料理の上に乗った。 店員は硬直し、料理を作り直してきます……と肩を落とし慌てて部屋を出た。 汚れた眼鏡を清原 節子(きよはら せつこ)が拭きながら。 清原「熊ちゃん災難だね。 あの荷物何が入ってるの?」 熊田「せっちゃんありがとう。あの荷物、群鬼さんに持ってくる様に頼まれてて……何が入ってるかは不明なんだけどさ」 清原の向かいに居た松平 章子(まつだいら あきこ)が枝豆を口に入れながら。 松平「また志津子のわがままに付き合ってたの?」 熊田「みんなが使うもんだからって昨日、持って来てね!って荷物を部屋に入れにきたの」 熊田は群鬼と幼なじみでマンションも隣同士。 幼稚園から大学まで一緒。 あのわがままぶりに耐えてきたのだと思うと、熊田の精神力は凄いもんだと関心してしまう。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加