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身体能力はそこそこだけど加減を誤ると殺しかねないな。
「こんな化物がいるなんて」
化物扱いされて全然ショックじゃないよ。ホントホント。胸が痛いだけだから
。
「さて、お前は誰なのか、どうしてこの街にいるのか、話してもらおうか」
「誰が話す……!」
ナイフ『月白』を振り上げると十字架刺青の男は震えて言葉を詰まらせる。
話す気がないなら生かしておく価値もない。こんな風な目で見たからビビったのだろう。
今年度カンヌ映画祭の男優賞はいただいたな。
「い、命だけは……頼む」
「質問に答えてくれるなら命はとらないさ。無駄に罪悪感に悩まされたくないし」
あの事件からも命を奪うのには抵抗があって殺しはしていない。
ただ、殺してしまいそうにはなる。
「わかった、話すからナイフを……」
「オッケー」
ナイフを下ろすと安心したように顔が緩んだ。手練れだと思っていたが見込み違いだった。
『赤神』の連中だったら自害するか、隙が出来るまで様子見する。
命乞いした時点で、殺す覚悟はあっても殺される覚悟はない。
「まずは自分の名前から言ってみろ」
「瀬戸内大輝だ」
「……こんな時間に何をしていた?」
「アンタ、釣りは好きか? 俺は大好きだ。大物を釣った瞬間の喜びが快感なんだぜ。今もほら、大物を釣ったんだ」
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