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大輝がニヤニヤと笑う。街のどこからか微かな悲鳴が聞こえた。
やられた。コイツはオレの気を引く餌だ。
大輝の腹を殴り気絶させる。
「ふぅ――」
心臓が高鳴る。皮膚の色が赤銅色化し、髪が揺らめく赤に変わる。
Vシリーズ。体得するまでに相当苦労したがなんとか自分の意思でなれるようになった。
ただし体に負担が大きいから長時間は維持出来ない。
「どこだ」
鋭敏になった全神経を集中させて敵の位置を探る。
悲鳴のあった方角。そう遠くにはいってないはずだ。集中しろ。僅かな変化を見逃すな。
「……見つけた!」
強く踏み込んで跳躍した。景色が猛スピードで流れる。
敵もオレに気付いた。だが視認してから逃げようとするなんて遅すぎる。
体格はオレの二倍はあるだろうか。逃げるスピードは遅い。
一回転して体重を乗せた踵を敵の頭に落とす。
踵が骨を打つ音と背骨が鳴る音が混ざり、不協和音を奏でる。
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