『七つの大罪』

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 『七つの大罪』は聞いただけの話だと人殺しはしている。この岩男からも血の臭いがした。  そんな奴に楽に殺してやるだけの価値があるだろうか?  あの事件の引き金になった元凶。『七つの大罪』さえいなければ結果は変わっていたかも知れない。  山田も山本も聡も杙奈も、死なずに済んだかもしれない。そう考えると苦しませて殺したくなる。    足が一歩ずつ下がる。    心より先に体が答えを出した。心が揺れる。    また一歩下がる。    このまま振り向いて走り去れたらどれだけ良いだろうか。  どれだけ良い気分になるだろうか。     「怒るよ?」      聞こえるはずのない声が聞こえた。だって今、あの人は人には言えない場所にいるんだからな。  それらしい気配もない。オレが作り出した幻聴だろう。  あの人ならそう言いかねない。言ってること無茶苦茶だけどそこがまたいい。  幻聴とは言え怒られたくない。  足を無理矢理動かして呻く敵に近寄る。     「ゲハハァァァ」      呻きから笑いに変わった。  ドスッ、と背中に何か刺さって抜かれてまた刺された。手際が良い。  振り返ると、さっき岩男に捕まっていた人がナイフを持っていた。
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