第一章・~由也の章~

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 と其の時、子供の一人が此方に気づき、はっと顔を上げた。「人・・・・?」  此方から向かって左側の子供が呟くように言った。左側の子は、髪は少し薄い黒色で短髪、瞳は大きく、まだあどけない少年の様だ。可愛らしいという表現が似合う容姿だった。  そして、其れに合わせて、一番右側の子供――少女も此方に気づいたようだ。少女は、黒髪をおさげにしていて、顔に少し雀斑がある子供だった。此方の子供も、可愛らしい子供だった。  彼女は私達を見て安心をしたというより、とても驚いた顔をしている。二人に引きずられるようにして抱えられている少女は、相変わらず具合が悪そうだ。  真ん中の少女は、長く伸ばした暗い茶色の髪色を綺麗に結い上げていて、幼いながらも美しい少女だった。しかし、動いたり痛みに声を上げるような動作は見られない。  もしかすると気絶しているのかもしれない。  私は、子供達にどうやって声を掛けていいのか分からずに、黙ったままでいた。そんな私に代わって、まず由也が身振りで、すぐ近くまでやって来た子供達に尋ねた。  子供達は顔を見合わせ、由也の身振りが解らずに困った顔をしている。 「この子は、その真ん中で具合を悪くしている子供が大丈夫なのか、と聞いている」  由也の代弁をする為に、私が口を開いた。しかし不躾過ぎる為、子供達は怯えの色を浮かべ、立ちすくんでしまった。怖がらせてしまったのだろう。  そんな私に、由也が少し厳しい表情を見せる。  解っているのだ。解っているけれど、もしまた由也を傷つけられたりしたらと思うと・・・・。  私は、どの様な態度で接すれば良いのか、正直解らなかった。私の中で、長年培われてきた人間共に対する憎しみは、決して消えた訳ではない。  それに、もとより人に接する事が苦手な私だ。説明や話が愛想良く出来る訳が無かった。それは、子供達相手とて同じ事だった。
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