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私が黙っていると、由也が子供達に身振りで語りかけるが、一向に通じない。それでも懸命に想いを伝えようとして、腕を広げたり手を振ったりして何とか表現しようとしている。
「何か、私達に手伝えることがあるなら手伝う、とこの子は言っている。それに、私は怒っている訳ではない。言い方は悪いとは思うが、是は私の癖なのだ。だから、気にしないでくれ」
まだ不躾であるとは思うが、少し穏やかな口調を心掛けて言ってみた。黙っているよりは幾らか良いだろう。
すると、恐る恐る、「あ、あの・・この子、助けて欲しいの」
まだ怯えの抜けきっていない少年が口を開いた。無理もないだろう。私が畏ろしく見えるのは喋り口調だけのせいではない。突然山奥で出会った人物だからであろう。
「僕達、この山に少し入った所で、お花を摘んで遊んでいたんだ。そしたら突然蛇が出てきて、この子が噛まれちゃったんだ!最初は全然平気だったけど、段々と魅楼(みろう)ちゃんの具合が悪くなってきてしまって・・・・それで僕達は、山の奥に生えているっていう蛇の毒に効く薬草を探しに来たんだ」と言った。
「蛇というと、これくらいの茶色い蛇か?」
手で蛇の大きさを示して、子供たちに確認してみる。
もし、私の思い違いでなければ、その茶色い蛇というのは『大九羅(おおぐら)』というこの山でしか生息しない、猛毒を持った蛇のことである。
この大九羅に一度噛まれれば、猛毒のせいで発熱を引き起こす。そして、熱と毒に躰が徐々に蝕まれ、死に至るのだ。大九羅はそれ程に危険な毒蛇であった。
「うん。魅楼ちゃんが噛まれた蛇は、それ位の大きな蛇だったよ」
やはり、間違い無い。このまま放っておくと魅楼という子は、三日も経たないうちに死んでしまうだろう。
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