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「大丈夫だ。毒を中和できる薬草を持っているから心配ない。すぐ薬を作ってやる」
日頃の習慣として、何か遭ったときに直ぐ薬が作れるように持ち歩いている小鉢を懐から取り出し、採取した薬草の一つを擦り潰し、他にも持ち合わせていた薬草を入れ、擦り出した汁を由也に持たせていた竹筒から水を取り、混ぜ合わせた。
用途が判明しているので薬はすぐ出来たが、後は毒素を抜く作業が残っている。子供達にそんな危険なことはさせられない為、私が患部から毒素を丁寧に吸い出した。
そして、先程の薬を飲ませようとしたが、魅楼は気を失っていたので、私が薬を口内に含み、魅楼の鼻を強く押さえ、唇を重ね、一気に薬を流し込んだ。
それを二、三度続けると、喉を鳴らして何とか薬を飲んでくれたので、赤く腫れた傷口を水でよく流し、持ち合わせていた白い布を患部に巻いた。
手際よく応急処置を行う私の姿を、子供達はじっと眺めていた。
「一応、この場で可能な応急処置を行ったから、大丈夫だろう。発熱はあるかもしれないが、心配要らない。死に関わることも無いだろう」私の言葉を聞いて安心した子供が、
「助けてくれて有難う!!」
「魅楼ちゃんが死んじゃったら、どうしようかと思った。よかった!」
「本当に有難う!」
と私に向かって口々に礼を言った。
同じ人間に礼を言われる事にさえ不慣れな私だったから、大したこともしてないのにそう何度も礼を言われると、恥ずかしい気分になった。だけど、不思議と悪い気はしなかった。
「別に、大した事はしていない」
平静を装ったつもりだが、私が少し照れている事を見抜いていた由也が、こっそり笑っていた。
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