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私達は『鬼山』と呼ばれる山奥の一軒家に、由也とたった二人だけで暮らしていた。とても小さな家だが、自分達が食べてゆく為の作物を育て、魚や肉を猟るなどして、特に不自由は無く生活していた。
何故私達が、他の者が居ないこの山奥の地で二人だけで暮らすようになったのか――――
其の理由は、人間達に迫害を受け、住んでいた村を追われたからである。行く宛も無い私達は、この様な山奥の誰も足を踏み入れられない、誰にも見つからないような場所でしか暮らしてゆけなかった。
この山は『鬼』が住んでいるという噂があったので、私達のような者でも他の人間には見つかることなく暮らして行けるのだった。
この時代の『鬼』は所謂物の怪の一つであり、紅い瞳と優れた美しさを持ち、旅人を襲い生き血を食らう化け物として知られていた。当時、不自然に人間が殺されたり、神隠しのように消えてしまったりする事が頻繁に起こり、村がひとつ、ふたつと滅んでゆくことがあった。
そして、先程寝床で眠っていた愛らしい子――由也は、『鬼の子』と呼ばれていた。
由也の容姿は少し薄い茶色の髪に琥珀色の瞳。それはまるで宝石のような美しさを湛えており、唇は艶のある紅い唇で、どれをとっても異国のものだった。年は幼いがとても美しく、少年とも少女ともつかぬ魅力を持つ、大変美しい子であった。瞳も紅色に近いものを持っている。
そして彼女は口の利けない子であり、人間のものとは思えない不思議な力を持っていた。
それ故、由也は人々に追われる生活をしていた。私と同様に。
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