第一章・~由也の章~

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 此処からは私の話になるが、私も行き場の無い追われる人間であり、幼少の頃から人付き合いも苦手で、ずっと人を避けるような生活を送っていたのだ。  故、住まいも持てず、旅人として孤独に暮らしてきた。だから生まれてこの方、喜びも悲しみも分け合う友人も居おらず、両親さえ早くに亡くした。  私が其の様な人間であるから、何処へ行っても厄介者としてしか扱って貰えなかった。冷たい人々の視線を前に、私はますます人と触れるという事に心を閉ざしていった。  そんな孤独な旅の途中、私達二人は出逢った。  年も随分離れてはいるし、最初のうちは言葉も通じなかったが、同じ痛みを持つ孤独な者同士、肩を寄せ合って生きて行けると思い、それからの後の旅は行動を共にした。  そしてこの鬼山に身を潜め、二人で細々と暮らしているという訳なのだ。  私は彼女と出逢う事で、とても救われた。笑う事さえ満足に出来なかった私の心を優しく溶かし、癒してくれた。私にとって由也は、大切な家族のような子だ。人が人で在る事に理由が要らないように、他人がどのように畏れようとも、由也は『由也』なのだから。  それ故、私は由也にとても感謝していた。 だから彼女の笑顔を守る為に、私は生きている。  ――それが、今の私の存在理由なのだ。  朝食の用意をしていると、狭い家に米の炊ける良い香りが広がった。  炊き上がった白い飯を御椀によそい、山菜の煮物や味噌汁を食事用の小さな卓袱台の上に運んでいると、微笑みながら由也が起きて来た。そして朝の挨拶代わりに、深くお辞儀をする。 「相変わらず、由也の起床の時間は正確だな」  思わず顔がほころんでしまう。「朝食にしよう」  由也は微笑んで頷いた。
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