第一章・~由也の章~

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 朝食を済ませた私達は久々の晴天に心を躍らせ、河原で魚を捕る為、由也と一緒に昼食用の握り飯を作り、早速出かけることにした。 「由也、今日は久々のいい天気だ。調子は良いのか?」  由也が頷いた。 「今日は沢山遊ぼう。由也の好きな花飾りも作ってな」  由也が再び笑顔で返事をしてくれる。他愛無い事かも知れないが、由也が病気もせず元気で居てくれることが何よりも嬉しかった。  今日は本当に気持ちの良い天候だ。日ざしも強過ぎず、心地好く冷たい風も吹いている。由也も何時もより元気に、私の手を引っ張ってくれた。  つい昨日まで梅雨のせいで長雨が続き、外遊びが全然出来なかった所為か、久々に元気にしている姿を見た気がする。 「由也が元気で居てくれて、嬉しいぞ」  私が微笑むと由也も微笑んだ。何とも無邪気な太陽の様な微笑み。私は彼女のこの笑顔が好きだった。      二人で暫く山道を歩いていくと、何時しか小さな川が開け、少し川の幅が大きく変わってくるのが見える辺りに着いた。  この調子で行けば、昼過ぎには魚を捕れる河原の方へ着くことができそうだ。日差しも強くなって来たが、相変わらず心地好い風が私の側を吹き抜けてゆく。そして傍には元気な由也の姿が在る。  現在、この時間が本当に倖せだと思える。是も由也の笑顔があるからだ。何時までも、何時までも私の傍で笑っていて欲しいと願うのは、贅沢なことだろうか?  誰に問いかけることなく心の中で呟いてみたが、答え等出る訳が無かった。
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