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「由也、今日は沢山魚が捕れて良かったな。今まで一番良く捕れたのではないか?」
私の言葉に、由也が微笑んだ。
あれから私達は、魚捕りや薬草の採取、花摘みをし、帰路に着いている。今日は由也の大活躍で、何時もより沢山魚を捕ることができた。
私達は来た道を辿り、河原の穏やかな場所まで戻って来た。しかし私達の家までの距離は、まだまだ遠い。
「・・・・!」
川原を出た所で、突然由也が立ち止まった。「どうした?」
由也は私の着物の袖を引っ張り、前方を指した。其の先には、何とも珍しい光景があった。
由也の指す其の先には、この辺りには決して足を踏み入れたりしない・・・・・・
――そう、其処には人間の姿があった。それも、三人も!
旅人でさえ、この鬼山には近づく筈が無い。この山は高く、頂上から麓まではかなりの距離がある。此処へ来ようと思ってやって来るか、迷い込まない限り、この辺りにはまず辿り着けない。
其れに麓の人間なら、伝説を畏れ、決してこの山には近づきすらしないのだから。
もし、この人間達が私と由也のささやかな暮らしと倖せを奪うつもりでやってきたのであるならば、容赦はしない――――・・・・と、身構えてみた所で、子供が三人。
だが、油断は出来ない。
私がじっと身構えていると、小さな手で、くいっ、と私の着物の袖を引っ張り、私の事を由也が呼ぶ。
「どうした、由也?」
「・・・・」
「由也?」
何か、必死に頼み事をしているようだ。
「・・・・!」
「一体、どうしたというのだ?」
彼女は身振りで、向こうから歩いてくる人間のうちの一人が怪我をしている、と言っている。
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