ぜろ

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何はともあれ、庭が広がったのは、政府やお偉いさん達にとっては喜ばしいことだろう。 ……しかし、広すぎるそれに隅々まで水を巻くのは難しいもので。 中心街は"人間らしい"生活をしている者が多い。 治安だって悪いわけではない。 人生の"楽しみ"を謳歌するには、丁度良い街だろう。 その周辺に存在する街も、中心街の影響を受け、どんどん発展している。 問題なのは、水はおろか手入れさえ忘れられている街だ。 …いや、諦められていると言った方が良いかもしれない。 そこは犯罪が溢れ、事件に巻き込まれ死んでしまう者、貧困で苦しむ者、薬に溺れる者…もちろん真っ当に暮らしている者も存在するが……様々、とでも言っておこうか。 廃退した街並みは人々に、"人間らしい"生活なんて望まない方が幸せと思わせ、やがて心までをも荒ませてしまった。 なんと嘆かわしい。 さて、退屈な説明はこれくらいにして。 これから皆様がご覧になるのは、廃退したある街での物語。 深呼吸したら、さぁ、覗いてみてください。 あぁ、でも気を付けて。 巻き込まれないように、ね。 では、いってらっしゃい。
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