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『お母さんなんで?どこにいくの?』
『ごめんね…惟紗(イスズ)…ごめんね…』
『お母さん、千尋(チヒロ)おじちゃん…おともだちでしょ?一緒にどこにいくの?』
『惟紗…お母さんね、ずっと嘘ついてたの』
『うそ?』
『ごめんね、お父さんと幸せに暮らしてね』
『お母さん!!』
母がついた嘘。
友達だと言って、アタシは何も知らずに母の愛人を慕っていた。
遊んだりしてくれてた日々が、ただの悲しい日々に成り下がった。
子供だったから気付かなかったけど、あんなにしょっちゅう家を訪ねてきていたことを今になって思い返せば、なんとなくわかってもおかしくなかっただろう。
父は自分のせいだ、とずっと嘆いていた。
単身赴任であまり家にいられなかった、自分のせいだと。
母を恨むどころか、父はアタシにこう言った。
『ごめんな、惟紗。でもな?母さんは優しい嘘をついてくれてたんだ。』
『優しいうそ?』
『ときに嘘は最大の優しさになるんだよ。でもだからって嘘を平気でつける人間になってはいけないんだ』
『ん~…わかんない。』
『…まだ5歳だもんな。今はわからなくていいよ。ただ、お母さんを恨まないでやってくれないか?』
『うん!わかった!』
『よし、いい子だ』
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