星野惟紗

6/12
前へ
/27ページ
次へ
父があのときアタシに言った言葉。 アタシはその言葉を忘れることなく、すくすくと育っていった。 でも、そんな中で気付いていったんだ。 "嘘は最大の優しさになる" そんな言葉は、嘘だっていうこと。 自分のやってることを正当化したいがための、言い訳にすぎないということ。 そうやって思っていくなかで、アタシは捻れていった。 嘘という凶器を、平気で使うようになった。 結局は、騙される方が悪い。 それを見抜けなかった、相手が悪い。 信じた方が悪い。 そう思うようになっていった。 いい嘘と悪い嘘? なにそれ? 結局、嘘は嘘。 いいも悪いもない。 そんなものは存在しない。 だったら どんな嘘だってついたっていいはずだ。 だって母が使った嘘だって、結局は自分のためだけについた嘘だったんだから。 傷つけたくないって思ってた? 逆に傷ついたから。 浮気ならもっと隠しながらやれよって、きっと今のアタシなら言ってしまえるだろう。 恨んでるわけではない。 今になって、呆れてるだけ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加