砂に泳ぐ魚

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夕美は陶然とし、宙をたゆたう。 まさに至福の時だった。 これほどの幸福が自分の人生に待っているとは、 一瞬たりと、夢にも見なかった。 しかし夕美の至福の時は、すぐに終わりを迎える。 光が角度を変えていく。 ほんのわずか、微妙な光のかげんで、 夕美が夢に見ることさえ叶わなかった景色は、消えてしまった。 夕美は未だ覚めやらぬ感動に意識を半ば奪われながら、風の向くまま流されていく。
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