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男はほとんど吸わずに終わってしまった一本目のタバコを灰皿に押し付け、二本目に火をつける。
夕美の一部は、じっとその様子を眺めて(感じ取って)いる。
夕美はタバコが嫌いだった。
これまでの人生で一度も吸ったことはないし、吸ってみたいと思ったこともなかった。
愛煙家などという傍迷惑な人間には近づきたくないとさえ、思っていた。
それが変わったわけではなかった。
相手がこの男だから、許してしまう。
タバコの味のキスに慣れたのはいつだったろう。
そもそも男をなぜ愛したのか、どんなふうに愛したのか、
どんな出会いだったのか、
それさえ砂になった夕美には、遠く曖昧だった。
ただ、人生のいつか、この男をとても深く愛したことがある。
それだけは覚えている。
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