砂に泳ぐ魚

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どうしてこんなことになったのかしら。 少年の母親の混乱した声に、夕美は気を取られる。 この朝、少年の母親は、学校へ行く我が子のためにいつものように早起きして朝食の準備をしなければ、と目を覚ました。 そして砂と化してしまった体に気付いた。 わけがわからず助けを求めようとして隣に眠るはずの夫を見ると、夫もすでに砂となっていた。 ふたりはベッドの上をふわりと舞った。 ふたりの意識は一瞬にして交じり合った。 どんな濃厚なセックスよりも強い結び付きが、快感を通りこした陶酔が、そこにはあった。 ふたりはしばし時を忘れ交じり合い、戯れた。 少年は夢うつつの意識の隅で、いつものように母親が自分を起こしに来るのを待っていた。 しかし、いつまでたっても母親は現れない。 そういえば、いつもキッチンから漏れ聞こえてくるはずの、母親が動き回る音もしない。 ひとの気配がしない。 少年は不安になり、ベッドからするりと抜け出した。 そっとあたりを窺うように、キッチンとダイニングへと続く廊下を歩いた。 部屋が暗い。 やはり何かがおかしい。 いつもと違う。
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