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目覚めると砂になっていた。
遠い東の空が白みはじめる頃、夕美はそのことに気付いた。
室内はまだ暗く、都会の住宅街は夜明け前の闇に閉ざされていた。
ベッドの上で、夕美の体は、まだ元の形を保っていた。
隣で眠る男が軽い寝返りをうった拍子に、夕美の体は砕け散った。
砂となった夕美は、男の素肌に、ベッドのシーツに、床に、部屋じゅうに飛び散った。
砂のひと粒ひと粒に夕美の意識は宿っていた。
ばらばらになった夕美はパニックに陥った。
意識はある。
ものを考えることができる。
けれど体を思うように動かすことができない。
あるべきところに手もなく足もなく、頭もない。
体が元の状態だったなら、髪を振り乱して叫んでいるところだ。
ああ、声も出ない。
男の寝汗に湿った体の上で、夕美は何度救いを求めたことか。
しかし男は、時折歯軋りをしながら眠りつづけている。
なんてのん気な。
砂となった夕美の体は、瞬間的な怒りのために、ふわりと舞った。
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