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僕が“マイ”にあったのは、ニューハーフパブでバイトしていた時だった。
大学卒業後、大手広告代理店に就職した僕は、毎日駆けずり回っていた。
広告代理店なんて言えば聞こえはいいが、何のことはない企業の御用聞きと変わらない。
ひたすら頭を下げ、リベートや接待で顧客の機嫌をとり、自分の成績を上げる。
同業他社とシェアを争い、同僚という名のライバル達と功績を競う。
毎日毎日、心身をすり減らすさまは、今思えばまるで“スリコギ”のようで滑稽だ。
2年半ほどが過ぎ、起床後着替えにクローゼットに向かおうとした自分が真っ直ぐ歩けていない事に気付いた。
医者による診断を受けた結果、
“病名 自律神経失調症”
この病名ははっきりとした病名がつけられない時につけられる、抽象的な名義であることは、なんとなくではあるが、知っていた。
2年半、同期の中ではトップの成績を収めてきた自分に対する会社の報いは、わずかな退職金と自己都合退社という仕打ち。
「皆君と同じか、君以上に働いているんだよ?
そもそも募集要項に書いてあったろ?
“心身ともに健康な人を募集します”ってさ?」
人事課長の言葉が空虚でうつろになっていた頭の中を通り過ぎていった。
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