―邂逅―

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休む間もなく働いていた2年半は、金を使う時間を与えず、また膨大な残業時間はそれなりの収入を与え、皮肉にもそこそこの貯蓄となっていた。 会社を“辞めさせられた”次の日から僕は、ひたすら本を読んだ。 トルストイからツルゲーネフから、太宰治から吉川英治から池波正太郎やらひたすら読んだ。 小説に読み飽きると、週刊新潮やアサヒ芸能やプレイボーイや花とゆめまで読んだ。 しかし、半年ほどで、そんな生活は終わりを告げる。 本が買えなくなったし、食料も買えなくなった。 現実的な問題として、お金が底を尽き始めたという事実に直面したのだ。 散歩に出かけた先の、ショッピングモールの中にあるファーストフード店にあった無料求人誌を持ち帰り、就職口を漁る。 何でも良かった。 何になりたいとか、 何をしたいとか、 もうどうでも良かった。 だからニューハーフパブ“シャンティ”のボーイ兼事務員の募集に応募したのも “なんとなく”
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