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俺の言葉に、羽はさぁっと顔を青くして、がっしとしがみついた。このやろう、と恨めしげな羽の呟きも今は気にしない。
そのまま俺は歩みを止めず、とうとう俺の肩が浸かってしまうくらいになったころ。
益々不安を増長させた羽が、足を絡ませてきた。
「ちょっ待て、待とうか城戸君。ヤバイよこれは、足つかんもん、あたし溺れるよ」
焦ったように言う羽に、俺は笑いながらその細腕を掴み俺の首に回させる。
「う、わっ」
忽ちおんぶした形になり、恐らくぽかんとしたであろう羽に微笑む。
「捕まってろよ?」
とぷん、と顔を海水につけて、ゆっくりと泳ぎ出す。羽はそのまま俺の腰に座るような形になり、上半身は完全に水面に出た。
するとさっきまで焦っていた羽も楽しそうに声を上げる。
「わ、わっ!すっごいすごいこれ!鋭矢号だっ」
鋭矢、という言葉に嬉しくなりながらも俺は時折息継ぎをしながら羽を乗せて泳いだ。
羽はもう自分の足がつかないことなんか完全に忘れて終始楽しそうに笑っていた。
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