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「…この、へなちょこーー!!!!」
お馴染みの叫び声と共に、いつもより強烈なグーパンチ。
…おかしいな、一応ご要望通りなはず、なんだけど。
「ユーリ」
「んー?どうした?ヴォルフラム」
「接吻しろ」
「ぁーうん、いいよいいよ………は!?せっぷん!!!?」
いきなり何を言うんだこのわがままプーは!!
「どうしたユーリ。接吻くらい知っているだろう?口と口を、こう…「わーー!!わーわー!!!!言わなくていい!!言わなくていいから!!だいたいなんでせ、せ、接吻!?」
「ぼく達は婚約者同士なのだから、別に問題はないだろう」
「ある!!大いにある!!おれ達は、お・と・こ・ど・う・し、なんだぞ!!」
「男同士であることの何が問題なんだ?」
「何がって…」
そう言われると、困る。
ヴォルフラムは男、おれも男。
この国では確かに普通なのかもしれないけどさ。おれの常識ではキスは男女のする行為であってだな…
女の子の唇はもっとこう…ピンクで、柔らかそうで…そこまで考えてから横で吠えているヴォルフラムをちらりと盗み見した。
「…あれ」
女の子顔負けの綺麗な唇だな、なんて思った瞬間。
「………」
ポカンとしたヴォルフラムの顔が、みるみる赤くなっていく。
「お、れ…今…」
何をした?
「…この、へなちょこーー!!!!」
お馴染みの叫び声と共に、いつもより強烈なグーパンチ。
走り去るヴォルフラムの慌ただしい足音と、殴られた腹の痛みと、
…唇のぬくもりだけが、残っていた。
-fin-
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