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「我が孫、届と早鳴へ」
目茶苦茶在り来たりな始まりをありがとう、おじいちゃん。
「これを読んでる頃には、わしは死んでるんやろな。正直、あんま死ぬなんてことは考えたことなかったは」
早鳴が、慣れない関西弁をゆっくりと、丁寧に読んでいく。
「お前達が家にきて、もう十年以上たつんやな。時間は早いで、本間。でや、届、早鳴。わしが死んだ今、渡しとくもんがある。それは今後お前達を助けてくれる物であり、この鈴然臣家の将来を担う物でもある」
突然早鳴が、手紙から目を離し、俺へと向き直る。
「ここで途切れてるよ、お兄ちゃん」
なんて半端な。それより、今はその物だ。おじいちゃんが俺達に渡す物って一体。
「お兄ちゃん?お兄ちゃんてば!」
「うへ!?」
早鳴の怒号にも似た呼び掛けで、飛んでいた意識が舞い戻ってきました。
「な、なに?」
「お兄ちゃんのも読んでみてよ。この手紙の続きかもしれないし」
そういや、俺にも手紙があったんですね。
俺は、俺宛の封筒の封を一気に切った。
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