Apple tarte

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   馬鹿らしい。  何だそれ?  天才、天才、天才って……。  だから何だというんだ。  鈴灯林檎という少女を何だと思っているんだろうか――。 「桃宮先生はあの娘にだいぶ好かれているようですが、あまりあの娘と仲良くしない方がいいですよ。貴方のためにも」 「それじゃ、アイツが一人になっちまうじゃないですか」 「もとからあの娘は一人ですよ。貴方が来る前はそれが普通で最良でした」 「……なるほど」  ――よくわかった。  やはり、聞くだけ無駄だったのだ。  たぶん、鈴灯林檎のことについて他の誰かに聞いても同じ答えが返ってくるのだろう。  もしかしたら、あの娘と同じまだ幼い子供達からも。  最悪。あの娘の両親からも――。  そう考えると、  実に気分の悪いことだ。  鈴灯林檎は天才。  ただ、それだけ。  それだけの理由で、あの娘は周りから受け入れられないというのだ。  いや。たぶん、  受け入れられないなんてもんじゃない。  見守るとか、支える、なんてのは体のいい言い訳で。  本当は、  触れてすらもらえない。  声すらもかけてもらえない。  形の見づらい完全な――拒絶。 「難儀な話ですね……」 「まあ。それが天才に生まれた性ってやつなんでしょうね」  うるさい。  本人がそれを望んだわけではないだろうに……。 「だから、私達にはまったく関係のない話なんです」  それは、他人にそう決められてしまったのだろう。  天才という生き物としてカテゴリーの枠を勝手に引かれて、勝手に恐れられて、隔離されて……。  鈴灯林檎という少女は、いつの間にか一人に、されてしまっていたのだろう。 「……嫌な話ですね」  ぽつりと、つい濁った本音が漏れた。 「本当に」  真弥のそんなつぶやきにも、先輩の教師は律義に応えてくれた。  
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