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その日も、いつも通りだった。
いつものようにホームルームを行い、
いつものように授業を始めて、
いつものように皆で給食を食べて、
また、いつものように授業を行なって、
いつも通りにホームルームを終えて、
生徒達が帰れば、いつも通り今日一日が終わる。
いつも通り、それでこの学校で過ごす一日が終わってしまうというのに。
「真弥せんせー」「まひろーん」「まーひーろー」「まひろー」「まひろん!」
「はいはい。どうしたー?」
ホームルームを終えて、大半の生徒が帰り、いつも通り、花に水をやろうとしていたら、
「ちょっと来てーっ!」
「いや。もうそっちから来てんじゃん。あと苦しいから抱き付くなよ」
なぜか、何人かの生徒達に囲まれてしまった。あと抱き付かれた。
真弥自身の人柄のためか、多くの生徒達は真弥に対して教師というよりも親しい友人というような感覚で接するものが多い。むしろ、そういう形で接してくる生徒の方が多い気もする。
だから、今日みたいに『まひろ』だの『まひろん』なんて呼ばれることは別に珍しくもないのだが、
「あと先生のことはちゃんと先生って呼んでくれなー」
一応、教師の威厳とかそんなものの欠片くらいは真弥にもある。――のだけど、
「「「「「はいっ。まひろん」」」」」
「…………おい……」
だいたいこんな感じ。
聞いてくれる気配全然なし。
全員が全員で異口同音に親しみ胸一杯に無邪気な笑顔で呼んでくれましたよ。
ただし、まひろん……。 もしかして自分は教師に向いていないのかも、と微苦笑。
朝にあった先輩のありがたーいお話とかも頭に過ぎり少しばかり不安になる。
「まあ、どうでもいいけど……。そんで、皆して今日はどうした?」
尋ねてみると、皆含み笑い。絶対に何か企んでいそうな楽しそうな子供の顔。
「あのねー。今日は家庭科の授業で調理実習があったのー」
――と、ぴこぴことしたツインテールを揺らす女の子、磯塚華露理(いそづかけろり)が楽しそうに言った。
「今日は好きなお菓子を皆で決めて自由に作っていいって言われたの」
華露理の後に、犬歯を除かせて笑うゴスロリ少女、狗狛伽沙凛(いぬこまきゃさりん)が楽しそうに続けて。
「それでねっ、わたし達はパンケーキ作ったんだよ!」
真弥に抱き付いている少女、越杏木(こしあんこ)が元気いっぱいに続けた。
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