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「まったくー。綾香ちゃんは泣き虫だねー」
「いや。その前に今さっき私達って馬鹿にされてなかったかしら?」
「……された」
「馬鹿にされてたのかっ!?」
何か、四人が真弥に撫でられている綾香を羨ましげに見ている気がする。
「――ひっ」
綾香もそれに気付いてか、四人の顔をそれぞれ見た後、真弥の顔をじーっとみつめて、固まってしまった。
そのさいに、また顔が真っ赤になってしまったり、せっかくなだめたのにまた瞳に涙が滲んでたり。
「あっ、あわわわ――その、もう大丈夫! 大丈夫ですからぁ!」
そして、真弥の手を振り払っていきなり床を転がった。
いや。本当に何事?
「大丈夫か? つーか、いきなりどうした?」
「な、なななな何でもないでふよ!?」
どう見ても何でもなくない。
床を転がり回り、あたふたと面白いくらいに慌てている綾香を眺めて思う。
俺、何かしたっけ?
「まひろんっ! ダメだよ、綾香ちゃん泣かしちゃ!」
なぜだかよくわからなかったが、杏木にまで怒られてしまった。
あと俺は別に何も悪くないと思う。
「とにかく、まひろんは綾香ちゃんが落ち着くまでしばらく近付かないで。とりあえずこれでも食べてなさいよ」
うずくまって何か悶えている綾香の背中を撫でつつ、伽沙凛はそう言ってパンケーキを真弥に差し出してきた。
何だか、全面的に真弥が悪いような言い方と扱いだった気がする。
「……いただきます」
まあ。アレだ。
たぶんこれらの仕打ちは生徒からの愛情の裏返しさ。
と、自分に言い聞かせながらパンケーキを一口。
そして、
「――ごぶっ!?」
吐いた。
口に入れた瞬間、すべての味覚芽に甘味だけで刺激されて、真弥は思わずパンケーキの残骸を吐き出した。
「わわっ!? まひろん大丈夫!?」
「ちょっとー。汚いよー」
「……水」
沙稚が差し出してくれたコップの水を一気に流し込み口の中を洗う。
洗ったというのに。
……何か、ものすごーっく甘ったるい。
「けほっ……わ、悪い……」
謝ってからもう一度口に水を含む。なぜか水が砂糖水のように甘い。
「ど、どうしたのよ?」
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
やっと落ち着いてきてくれていた綾香がまたあたふたと慌てて、それを抑えながら伽沙凛が真弥に問う。
「な、何か私ってば失敗しちゃいましたかあ!?」
「い、いや……大丈夫、大丈夫だから……」
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