Prologue

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   ……ふう。  どこまで話したんだっけか……。  あん?  アダムとイヴがどうして蛇に騙されたか、まで?  ……ああ。思い出した、思い出した。  んじゃ、話の続きをしようか。さて、善と悪。  この二つを持たなかった彼らは蛇の言葉をどう捉えたのだろうか?  それはお前らにはわからない。  俺にもわからない。  誰にもわからない。  わかるのは――アダムとイヴだけ。  なぜなら、俺やお前らにはもう善も悪もあるからだ。  だから、その二つを持っていなかった彼らがその時、蛇の言葉に何を思ったのかなんて、わかるわけがない。  わかるのは、神話の一つとして今に残る話の結果だけ。  結果は、彼らは神に背いた、と。  神と約束をしていたにも関わらず、と。  なぜなら――。  『善』が無いから彼らは神様の約束を無責任にも破ってしまった。  『悪』が無いから彼らは蛇の甘い言葉を疑わなかった。  と、そんな感じだろうさ。  まあ。それはどうでもいいんだけど……。  結果。アダムとイヴは、それ故に食べてしまった、とさ。  そして、それは原罪による『今』を生んでしまった。  さて、もうわかるやつもいるだろう?  アダムとイヴという原始の人間。  彼らは善悪の概念を手に入れ、そして、それを神の手から奪ってしまったということから、神様は彼らをエデンの園から追放し、彼らとその子孫に原罪を与えた、というわけ。  そして、神にそこまでのことをさせた――林檎。  林檎は神様だけが食すことを許される『禁断の果実』だと言われていてな。  それは、食べたものに善と悪を与えると言われ。  それでいて“人類”の究極の罪とされるくらいに神様に大切にされたていたんだ。  ……まったく、それは本当にただの林檎だったんだかなぁ……。  ん? 何でそう思うのか、って……?  だって、林檎を食べた二人はエデンから追放されて、  俺達は決して消えることのない罪まで背負わされちまったんだぞ?  ほとんど動かない出無精の神様ってやつがそこまでするんだ。  まさか本当にただのリンゴだった、とは思えないじゃないか。  それに語られている内容通りなんてことはありえない。  だからこそ――本当に、いったい、林檎ってのはどんなものだったんだか、てな……。  実に気になる話じゃないか。  ………………。  
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