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「――んじゃ、今日の授業はここまで。すぐにホームルームを始めるから全員そのまま席についてろー」
先までの授業中に見せていたもったいぶった喋り方や意外に整った顔を真剣に輝かせていた姿を捨てて、桃宮真弥(ももみやまひろ)は気怠く息を吐くようにそう言った。
教室で授業を受けていた生徒達は、一日の学業を終えた疲れからかそれぞれに息を吐く。
机に突っ伏す子供。
今さら起きる子供。
未だに寝ている子供。
何故か涙ぐんでいる子供。
周りの子達とで喋る子供。
すでに帰り支度を始めている子供。
放課後の部活などの用意をする子供。
人それぞれながらも、真弥の言葉通り、そのまま席についてホームルームの始まりを待った。
それを見て、真弥は大声を上げて笑う生徒を適当にいさめて、ホームルームを始める。とくに何も急いで連絡することはなく、始めてものの数分でホームルームは順調に終わった。
ホームルームが終わると同時に、男の子を中心とした生徒の何人かが元気よく教室を飛び出していった。
何人かの生徒達は、真弥に手を振りながら、ゆっくりと喋りながら教室を出ていく。
何人かの生徒達は教室に残り輪になるように椅子や机に腰掛けながらおしゃべりを始め。
何人かの生徒は先までの授業のことについてやその時の余談について質問してきた。
それらに律義に手を振って応えたり、見送ったりとしながら、真弥は今日の授業で使った資料を片付けて。真弥は教室の窓際に置かれた花へと水をやった。
「うーん……」
花が散ってしまわぬように優しくなでながら、ため息。
飾られたその花は、花弁の先の方から少しばかりしおれ始めている。
「ちょっと、残念……」
真弥には、それが以前の輝いていた花の生気や何かがなくなってしまったようにも見えた。
いくら可愛らしい花でもいつかは枯れるものとはいえ。それは少し寂しいものだ、と思う。
「まあ。しょうがない、か」
花はいつかは枯れてしまうもの。
だからこそ、花は美しく咲き誇る。
これはいったい誰の言葉だっただろうか――なんて、自分には似合わないな、と思い、真弥は微苦笑をもらした。
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