Apple tarte

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  ◆ ◆ ◆    ◆ ◆ ◆ 「そんなもの、聞いての通りですよ。周りがあの娘から避けている。だからあの娘は意識的にか無意識的にか周りを拒絶している。それでいいじゃないですか。別に誰かが問題を起こすわけでもない、傷つくわけでもない。それなら、あまり関わらず見守ってあげればいいじゃないですか」 「いや。よくないでしょ」  朝、ホームルームを始める前に、真弥は、先輩の教師に彼女のことについてまだ悩んでいるのかと訊かれた。  真弥はそれに対して、自分の一ヶ月ほどではあるが見てきた鈴灯林檎という少女についてとその周りの人間についてのことを愚痴の如くそれらを思ったままに吐き出した。  そして、それに対しての応えはコレ。  まったく何の参考にもならない。 「いいじゃないですか。私から見たら、桃宮先生みたいに一人の生徒のことを気にし過ぎていることの方が問題あると思いますけどね」 「……普通ですよ」 「それが世間的や道徳的には普通かもしれませんが、今の私から見たら普通じゃないですね。私達、聖職者って生き物はね。生徒一人一人を気にかけつつ、すべての生徒達に対して平等でなければならないのですから。いちいち何かを話すごとに問題児の一人を気にかけていてはどうしようもないのです。だから、あの娘のことを気にかけることが別に悪いことは言いませんが。桃宮先生の場合は気にし過ぎていると思います」 「はあ……」  生返事。  自分はあの娘に対して気にかけ過ぎているとまで言われてしまった。  それについては、自覚がない、と言えば嘘になる。  事実、自身ですら何故こんなにも彼女のことを気にしているのか、なんて思う。 「それに、彼女は『天才』。すでに生き物としてのでき方が違うんですよ。だから、私達みたいな凡才が気にかけてもあの娘自身の問題なんて微塵も理解できないんです。理解できないから、私達はあの娘を見守ってあげることしかできないんですよ」 「……そうですか?」  それは、違うと思った。 「あの娘はまだ十歳なんですよ」 「それでもあの娘は天才なのですよ」 「でも、まだ子供です」 「ええ。間違いなく天才の」 「ですから……」  ダメだ。  こんな会話を続けていても何の意味もない。 「桃宮先生」 「何ですか?」 「過ぎた才能を持った人間っていうのはね、この世界で一番質の悪くて身近で扱えない生き物なんですよ」  馬鹿か。  
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