第2章

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焔が居間に戻ってくると、朝食の用意ができていた。 巌は焔を食卓に着くように促し、自分も座り朝食を食べ始めたのだが、真剣な顔でこう言った。 「焔よ。お前は今日から十六じゃ。 十六と言えば、昔はこの年で元服を行い、大人の仲間入りを果たしたのじゃ。 だから、これまで以上に思慮深く行動しなければならん! わかっておるのか?」 焔は心の中で、(いつの時代の話だよ…)と思いながらも声には出さず、大きく頷いてみせた。 それを見た巌は、満足そうな顔をして、横から箱を取り出した。 箱の中には腕輪が入っており、それを焔に見せながら、 「焔よ、これはお前へのプレゼントじゃ。 我が新宮寺家は、代々男子の16歳という元服の年に、この腕輪を送るのがならわしじゃ。 はずしてはいかんからの!」 言い終わると、焔の左腕へ強引にはめようとした。 「わかったから! 無理矢理はめようとしないでよ! あとではめるから! それに今、朝飯食ってるんだよ!?」 そう言って、焔は腕輪を奪い、ポケットへとねじ込んだ。 朝食を食べ終えた頃に時計を見ると、8時を過ぎていることに気付いた。 「・・・!! うわっ! 遅刻しそうだ! じゃあ、じいちゃん、いってきます!」 片付けもそこそこに、玄関を出て行った。  
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