“徒然”って言うと、なんだか格好よく聞こえる退屈な今日。

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  ヤツは私の隣の席だ。 授業中は、いつも寝て過ごすか、膝の上のマンガかゲームに没頭して過ごしている。 陽の下にいたって、少しも透けない黒々とした太い髪に、その下の不健康そうな白すぎる頬。 顔のパーツの中で唯一わかるのは鼻と口くらいで、目はメガネをかけてるんだなって認識しかない。 前髪 長すぎだから。 いつも猫背で、喋っているのもほとんど知らない。 そんな六浦は、クラスでも孤立していた。 「周りなど関係ない」というような態度には多少イラッとするが、害はないので別にかまわない。 隣の席と言ったって、話したこともないなら別クラスも同然だ。 私はただ、ヤツが読んでいるマンガのタイトルや、ぼーっと空を眺める横顔を知っているくらいしか、六浦とは関わりのない、赤の他人なのだ。  
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