不思議・ド・ソレイユ

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「もう少ししたならば、この砂場に小さな男の子が来るよ」 「……おとこのこ?」 「そう、男の子だ。……一緒に遊んでやってくれないかな?」 続けざまにちょび髭は言う。 たいして深く考えもせず、小さい私は頷いたんだと思う。 遊び相手が来るだって? おいおい、飛んで火に入る夏の虫状態じゃないかよー、なんて思っていたのかも知れない。 なんにせよ。 小さい私が頷いたのを確認すると、優しい笑顔のちょび髭はゆっくりと立ち上がった。 「彼女の事は教えてあげる事は出来ないんだよ。ごめんね?」 「ほわっ?」 意味の分からない子供特有の雄叫びがあがる。 喜怒哀楽の内の一体どれなんだよ? 自分の事ながら、つくづく悲しくなりやがるぜ。 小さい私に、私が悲しみに満ちた瞳を送っていると。 「教えてあげる事は出来ないが、いずれ必ずわかるよ」 くるり、と小さい私から背を向けて、ちょび髭は被っていたシルクハットを脱ぎ片手で軽く上げる仕草を見せた。 「どこへ行くの?」 小さい私が問いかける。 シルクハットを遊ばせながら歩くちょび髭は。 「どこだろうね? 旅の途中だから、ちょっとわかりかねるね」 小さい私には振り返らないちょび髭は、傍らに立つ“私”に目を向けた。 にこり、と微笑みを向けたちょび髭は。 「旅の終着で、縁があるならまた」 まるで蜃気楼の様に。 どこまでも優しそうな微笑みと共に、ちょび髭はその姿を消した。
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