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「ほえー? マルチャンだった! おじちゃんはマルチャンだったのか!!」
マジシャンだよ、バカやろう。
自分の覚え違いだからハッキリと覚えているんだよ、バカやろうが。
わーいわーい、なんて無邪気に飛び跳ねる小さい私に、私は悲しみのため息が止まらない。
いいからさっさと砂の城作っていてくれよ。
なんで喜びをよだれ一杯で表現するんだよ。
あーもう、目を背けちまったよ。
「あー、本当に来たぁ!」
思わず目を背けた自分の耳に、小さい私の嬉々とした声が飛び込んでくる。
何事?
なんて考えるまでもない。
公園の入り口。
小さい私と同い年位の男の子が、砂場めがけて全力で走ってくるのが見えた。
「ねえねえ、初めまして、私と遊ぼ~?」
すげえな、子供は!
感嘆の念を感じ得ない私は、思わず口元に手を当ててしまった。
「いいよー! 遊ぼ遊ぼー!!」
こちらも即決。
そんなやりとりを私は黙ってみている。
記憶を洗いながら見てるんだけど、この記憶は知らないな。
私の“不思議”はちょび髭が消えた所までだったんだけど。
不意に。
「お姉ちゃんも遊ぶ?」
伸びやかな声がした。
え、と。
ん? なんて首を傾げて男の子は。
「ねえねえ、誰にしゃべり掛けてるの?」
小さい私の問いかけを無視する様に、私の顔を見上げていた。
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