ある天使の受難と初夏の夢の始まり

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「結局……行き着く先の世界って?……地獄……とか」 「…………ここ」 パックは長い尻尾を曲げ先だけ下を向けると、ベッドから飛び出した白猫がじゃれついてくる 「……………僕んち」 いや違う そんな何万年も前に建ってるわけないよ 「人間‥‥界?」 「と、言うよりは地球だな……この星は井戸から落ちた者の牢獄だ、人間が発生する以前の話だが……地獄ではない……まぁその話はいい、直接は関係ない……つまり今回のターゲットは地球に落ちた……それだけ理解しろ、お前に多くは望めそうもないな」 尻尾で床を指したまま パックは頭の上の耳を掻く 「井戸の使用許可は何万年も出てないらしい……快挙だな、乾杯でもしたいくらいだ」 パックは煙草を揉み消しながら尻尾で新たな煙草を床から拾い上げ口の端にくわえた 猫にしては吸い過ぎだと思うがどうなんだろう?他に煙草吸う猫を知らないからなんとも言えない 「そして話は戻り、今回のケースだ……窃盗容疑の能天使が重力の井戸に落ちた……すぐに確保という任務だな」 僕が頷くと それを確認したかの様に目を離し くわえた煙草に火を灯す 「さっきの反乱の話に裁判が出てきたのは憶えてるか?」 僕はまた頷いた 他にすることがない 「裁判の結果はほぼ全員が有罪……神に情状酌量などない……YES.NOのみだ、有罪判決が下るとそいつらの体に変化が起こる…いわゆるフォールダウンだ」 「ふぉーる‥‥だうん?」 煙草の煙に目を細めてる 少し怖い顔……なんだな今は 全然怖くないが 「フォールダウン……つまり……堕天の始まりだ」
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