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翌朝
火は鎮火されたが
まだ煙がくすぶっている。
吉田屋周辺の建物は燃え炭化した材木が転がっている。
火事の犠牲になった死骸に藁を被せる役人。
その役人はよれよれの羽織に髭面の中年男であった。
死骸に手を合わせるその役人。
「なんとまぁ…酷いもんだ。坂田そっちはどうだ?」
顔をしかめながら坂田と呼ばれる同心に声を掛ける、痩せ形体型でつり目の男、坂田と呼ばれる男の上役であろう。
「吉田屋の連中は屍に刺し傷がありますな、山本様これは殺されて火を放たれたに違いないようですな。」
同心坂田は山本に言った。
この同心は坂田豆辺衛、北町奉行所定町廻りである。
「また…例の黒鬼か…ひでぇ事しやがる」
ぐっと拳を握る山本。
この山本と呼ばれる人物、北町奉行所筆頭同心山本半助である。
文政八年…江戸に突如現れた謎の盗賊「黒鬼」は江戸の町民を恐怖に陥れた…虐殺、強盗を我が物顔で繰り返していた、無論奉行所も全力を尽くし黒鬼を追っていたが正体不明な賊の為手を焼いていた。
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