第一話

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―――――午前中の暖かさが嘘のように肌寒い昼下がり――― 体育館に続く渡り廊下を体型に見合った弁当箱を持って虍太郎は話す 「なぁ?純平ー春休みの練習どんな感じかな? 休みとか?」 「どんな感じ?って去年と変わらないだろ! なんか用事でもあるのか?」 「用事は特にないけど… 春休みが終わったら三年だろ!? みんなで集まるのもそうそう無くなるだろ! その前に思い出づくりなん…」 純平が話しをさえぎり 「いいんじゃないか!」 虍太郎は嬉しそうに 「だろ!!」 「行きたい場所とか決めたのか?」 「ペンションとか? どうかな?」 「やっぱ今の季節、外に出たいな!」 …… さっきまでにぎやかに喋っていた虍太郎の声が聞こえなくなる 不思議に思い純平が来た道を振り返る―― 虍太郎は低い壁にしゃがみ込んで少し隠れるように何かを見ている 純平はあきれながら 「覗きなんてしゅみが悪いぞ!」 虍太郎は慌てて純平をしゃがみ込ませ 「シー!美月ちゃんと 5組の田中がいる!」 純平はそう聞いて少し身を出す 見ると中庭に二人の人影が あいにく、人物をとらえることは出来たが、話しまでは聞こえてこない 美月が頭を下げている田中が気まずそうに手を振って美月から離れていく 虍太郎は今までしゃがみ込んでいた体を急に起こし、 「あれはフラれたね!」 「なんでわかるんだよ?」 「田中じゃ美月ちゃんに釣り合わないよ!」 純平はどんな奴なら釣り合う? と聞こうと思ったが 辞めて そっけなく答える 「…そうか」 ―――まもなく春休みを迎える―――
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