発表会

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 それでもまだ、さっき言った誰か別の者による魔術の可能性もあった。そんな期待を胸に、いじめっ子はリオを見つめる。  だが、そんな期待はリオが返してきた笑顔によって軽々と砕かれる事となった。リオが手の平を床に向けると、そこから炎が出現し、床を広がるようにしていじめっ子に接近してきた。その時のリオは、とても楽しそうであった。 「くっ!?」  リオが魔術を使えた事に驚き、リオの笑顔に寒気を覚えたいじめっ子だったが、自身に近寄る炎の危機に体は勝手に動いていた。  いじめっ子は手の平を迫りくる炎に向け、未だ発動中の魔術によって具現化した水流をぶつける。  それでも炎は止まらない。本来なら打ち勝つか拮抗するかのどちらかなのだが、いじめっ子はこの一ヵ月の間に水の操作に集中していた。それに引き替え、リオは魔力操作に集中していた。  魔力は魔術を使用する際の燃料である。燃料であるが故に、使い方によっては燃費や効果に影響が出てくる。よってリオの出す炎は、純度においては劣る水の魔術に打ち勝ったのだ。  一ヵ月程度の練習ではそこまで差は埋まらないはずだが、ウィルズは魔力操作のコツをアルダンから聞き出しリオに伝えていた。神界で最も魔術に長けているであろう者のアドバイスを実践してきた今のリオは、魔力操作においては間違いなく中学一年生の中でトップであった。
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