第二章

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「蝶、そんな格好でいると、お風邪を召されますよ」 窓辺にたたずんでいる少年に、玄人は声をかけた。だが、微かに反応を示すも、忠告に従うつもりがないのか、その場から動こうとしない。 玄人が言った通り、彼は酷く寒そうな格好をしていた。いくら5月といっても、まだ夜になれば寒くなることもある。にもかかわらず、薄い白い布地を緩く巻いただけという寝間着姿だった。時折見える白い肌は男にとっては目に毒だ。 玄人はふぅ、と息を吐くと掛けてあったガウンを手に取り、彼に歩み寄ると、そっと肩にかけてやる。 「…何を見てらしたんです?」 「…別に…ただ外を眺めてただけだ」 蝶は無表情にそれだけ言うと、肩にガウンをかけたままスッと玄人の横をすり抜けてソファに横になるように体を投げ出す。寝間着の裾がめくれて白い太股が露になる。 「蝶…もう少し服装に気を使って下さい……目に毒です」 その姿を見た玄人が蝶から目を逸らしながら呟く。彼は呆れたように玄人を見遣ると、小さく口の端を上げて嘲るように笑った。 「お前は俺に欲情しないから世話役になったんじゃなかったか?」 「……それは、そうですが」 蝶の問い掛けに玄人が憮然と答える。 「だったらそんなこと言うな。ここは俺の部屋だ。どんな格好でいようと俺の勝手だろ」 「分かりました……ただ、あまり薄着はしないで下さい。まだ夜は寒いのですから」 「……分かった」 蝶は小さく頷くと、渋々羽織っていたガウンに腕を通す。そして座り直してから再び口を開く。 「そういえば……明日第一選定があるみたいだな」 少し声を低くして話しかける蝶に、玄人は神妙な顔付きで頷く。 「ええ。おそらく通るでしょうね。彼女が了承したのですから」 「アイツが許可した件が第一選定を通らないのはまずないからな…」 蝶が目を伏せて溜め息をつく。玄人は胸ポケットから手帳を取り出した。 「第二選定はどうなさいますか?依頼人の予定にもよりますが…」 「そのまま出来るならやる。日を分けるのは面倒だからな」 「了解しました。では、早速手配を」 「ああ」 手帳に書き込んでから少し頭を下げると、玄人は静かに部屋を出て行った。
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