第二章

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玄人が出て行くと、蝶は先程とは違う方角の窓辺へと移動し、そして窓を開けて窓枠へと腰掛けた。 リアリスト本部であるここは四国の中心に位置し、どの国にも許可さえあれば自由に行けるようになっている。そして蝶が現在いるこの場所は、その建物の最上階に位置し、全ての国が見渡せるようになっていた。 ここから見える景色はそれこそ絶景で、この景色を見ることが許されているのは数少ない。 しかし、蝶は見ることは出来ても、自由に動くことは出来ない。出来たとしても夜で、人気のない所だけだった。 美しい景色を見る度に、心が何かを失って行くように思える。それでも蝶は見るのだ。何か争いが生まれていないか確認するために。 「ここは…平穏か…」 ふぅ、と息をついてから、また違う方へと移動する。そしてまたじっと見つめていると、コンコンとノックの音がし、カチャと音をさせて扉が開く。そこには光の姿があった。 「蝶…今大丈夫ですか?」 「光か……ああ」 蝶が小さく頷くと、光は静かに扉を閉めて、蝶の元へと歩み寄る。そして黙って蝶の斜め後ろ立つ。 「何か用があったんじゃないのか…」 蝶が黙っている光を不思議に思い、外を眺めたまま声をかける。光は少しためらってからゆっくりと口を開いた。 「あの……大丈夫ですかっ?」 「は?…何がだ?」 蝶が怪訝そうな表情で首を傾げる。光は心配そうな表情を浮かべる。 「最近…仕事多い気がして…。…負担になってませんか?無理してません?」 「………」 蝶は黙り、視線を光に向けた。光は真剣な眼差しで彼を見つめている。 蝶は小さく溜め息をついてから静かに立ち上がると、光に近より視線を合わせる。光よりも身長が低いため見上げているはずなのに、その視線は明らかに威圧を帯びていた。光は思わずその視線にすくんでしまい、黙り込む。 「余計な事は考えなくていい」 そう断言してから、蝶は光の横を通り抜け、また別の窓へと移動する。光は何か物言いたげにしていたが、結局その後何も言うことが出来なかった。
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