第二章

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翌日。予定通り第一選定が行われることとなった。 第一選定には玄人、流風を含め五人の選定人が依頼人と直接言葉を交わし、信憑性や妥当性、依頼人に対する信頼度を確認するものである。この様子を蝶はモニターで観覧している。その後第一選定通過が決まると第二選定に移行し、蝶がモニター越しに依頼人と会話をする。 そして蝶が信頼たる人物かつ情報だと判断すると、その依頼は成立ということになり、依頼人と最終契約を交わし、蝶が実行へと移すのだ。 今日の件は比較的早く第一、第二選定を通過した。理由は簡単で、以前から蝶が問題視していた件だったからだ。 蝶は時折依頼がない場合でも暗殺やその他の事を行う時がある。しかし、それは極希なことで、いつもギリギリまで待つのだった。今回も待っていた内容だったので、すぐに承認が降りたのだった。 「では、予定等は全てこちらが管理します。また、何かありましたらこちらから連絡致します。それでよろしいですか?」 「ええ、お任せします」 玄人の事務的な言葉に、依頼人が神妙な顔をしながら頷き、返事をする。そこで、玄人はすっと一枚の紙を差し出した。 「これは…?」 「それは、蝶との契約書です。重要なことだけ申し上げますと、もし、契約内容及び依頼内容、また関わった人物名等を他言なさった場合、蝶によって裁かれるというものです」 「それは……蝶によって殺される、ということですか?」 「まぁ、そうですね。ちなみに、漏らされた相手も対象となります」 玄人がさらりと恐ろしいことを口にする。依頼人は微かに瞳を揺らすが、口を真一文字に結ぶと、その書類にサインをした。 「有難うございます。これで手続きは完了致しました。それでは、達成しましたらまたこちらにいらして下さい」 玄人はにこやかな愛想笑いを浮かべて軽く頭を下げる。そして依頼人を送ろうと立ち上がった時、いきなり声をかけられた。 「あの…」 「?何でしょうか?」 「もし、あれにサインをしなかったら…どうなったのでしょうか…?」 「ああ…」 玄人は依頼人に向き直ると不適な笑みを浮かべて言葉をつむぐ。 「それはもちろん。 蝶があなたを処罰されるだけですよ」 依頼人は顔をひきつらせるも、納得したように目を伏せて立ち上がると、軽く礼をして部屋を出て行った。
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